『蒔絵飾皿 ファイナルファンタジーXIV 龍神』のお話
「ファイナルファンタジーXIV ファンフェスティバル 2024 in 東京」にて展示される『蒔絵飾皿 ファイナルファンタジーXIV 龍神』
今回はこらちについて詳しくご紹介させていただきます。
少し長くなりますが、最後まで読めば実際の展示をご覧頂く際によりお楽しみ頂けると思います。
※展⽰の観覧には「2⽇通し券」が必要となります。また、チケットの応募受付は終了しています。
【全体のイメージ】
トレーラー「時代の終焉」に登場するバハムートを描くということが決まった時、一番最初に考えたのは衛星ダラガブをどうするかでした。
ダラガブから現れた想定外の存在であるバハムートが終末をもたらすという一連の流れを表現するためにはダラガブの要素は入れたい、しかしバハムートが現れた時点ではもうすでにダラガブは炸裂して飛び散ってしまっている、ここが悩みどころでした。
そこで私達は、今回作成する飾り皿が円形でかつ太めの縁があることに着目し、この飾り皿全体をダラガブそのものに見立て、その中に終末をもたらすバハムートという存在が封じられているという解釈をすることにしました。
中に描かれている絵は、封じられている存在が開放されたときに引き起こされる事象。
それを封じているダラガブがこの飾り皿そのものです。
【バハムート】
今回の作品の中核を成す存在であるバハムートは、蒔絵の技法の中でも特に迫力のある「肉合高蒔絵(ししあいたかまきえ)」という技法が使われています。全体を一様に盛り上げるのではなく、絵の中で手前側となる箇所は厚く、奥は薄く盛り上げることで蒔絵で奥行きと立体感を出すことができます。
特にわかりやすいのは左脚と左翼です。
左脚は尾→太腿→膝先から爪先までの三段階で高さが付けられており、脚の形がとてもわかりやすくなっています。
また、パーツ全体を一度に描くのではなく、本物の鱗のように1枚1枚丁寧に重ねて描くことでより立体感が演出されています。
構図のなかで一番手前側に来る左翼の先端は特に太く、厚く盛り上げています。
翼骨は全体的に厚く、翼膜を薄くすることで翼全体に立体感が出ています。
また、翼骨とくらべて翼膜の金粉を磨ききらないことで、翼膜が全体よりやや暗めの仕上がりとなり、光のあたり具合で翼骨が美しく浮き出てきます。
目立たないところですが、目には螺鈿が入れられています。
細かい顔の造形も丁寧に再現。
【背景】
本作の背景は、「天空は勿論、雲の下まで全てが炎に焼かれている世界」を描いています。
雲から伸びる炎は地獄絵図などにも用いられる表現で、見えない雲の下も地獄のような逃げ場のない状態であることを表しています。
天高くまで立ち上る炎の赤と金梨子地の雲が絶妙なグラデーションで渦巻いており、見る角度や光の当たり方で全く違った表情を見せます。
【ダラガブ】
普段蒔絵ではなかなか描くことのない機械的で無機質な存在。
硬質で直角、直線といったデジタルな雰囲気をイメージして描きました。
中にいるバハムートの力に押されて青い模様が内側から段々と赤に染まっていくという力の流れを表現。
螺鈿に使う貝そのものを貼ったのでは様々な色に乱反射していまい赤、青の色に固定することが難しかったため、
貝を細かく砕いたもの、銀粉、乾漆粉(色漆を乾燥させて細かく砕いた粉)を混ぜた物を使いました。
貝が入っていることで様々な角度からみてもキラキラと輝き、銀を混ぜることで正面から光が入ったときに美しく模様が光ます。
バハムート本体、背景、縁の模様すべてにおいて共通することは、光の当たり方や見る方向でその表情が大きく変わることです。
会場では、ぜひ様々な角度から作品を見てみて下さい、写真だけでは伝わらない表情や立体感、奥行きが楽しめます。
とくに正面から光を当てたときの輝きは圧巻の一言。
普段は朱の下に隠されている金が姿を表し、全く違った表情を見せてくれます。
蒔絵だけではなく、木地、下地、上塗り、磨きまで輪島塗の技術を結集して作成した『蒔絵飾皿 ファイナルファンタジーXIV 龍神』
会場にお越しの方はぜひご覧ください。
©SQUARE ENIX